(幹事社)
ありがとうございました。それでは発表項目について質問がありましたらお願いいたします。よろしいですか。では幹事社質問に移らせていただきます。よろしくお願いします。リニア中央新幹線の関連で2点質問がございます。1点目は、今、川勝知事は、国、県、JR東海との新しい協議の場に環境省や農林水産省の関与を要望されております。一方で国側が担当は国交省の鉄道局だという見解でいます。この新たな協議の場の枠組みについては現状どこまで話し合いが進んでいるのでしょうか。また、協議の開始の見通しはいつごろになるんでしょうか。お聞かせください。2点目は、先日、国交省鉄道局の江口審議官が、大井川の流域10市町に足を運んで意見聴取を終えました。県として今後国がどのような形で流域10市町に関わることを望んでいらっしゃるのか、お聞かせください。
(知事)
どうも、リニア新幹線に関わる二つの質問ありがとうございました。最初のご質問でございますけれども、新たな協議の場の枠組みにつきましては現在国交省さんの方で検討されていると理解しておりますが、協議開始の見通しについては、その連絡がございませんので、かれこれ1カ月以上になりますね。申し上げようがないというところでございます。そして大井川中下流域における住民の皆さまの生活、産業、自然環境など、さまざまな分野に深刻かつ重大な悪影響を及ぼしかねない、この悪影響を排除するためには、関係省庁が国を挙げて対処する新しい枠組みが構築されるべきではないかというふうに思っております。
二つ目のご質問でございますけれども、今回の江口さんによる意見聴取で10市町の首長の皆さまは、異口同音に、それぞれの地域の生活、産業ならびに自然環境にとって、大井川の水がかけがえのない命の水であることを切々と訴えられたと承知しております。この思いをしっかり受け止めていただきまして、リニア工事に伴うさまざまな課題等への責任を持って対処されることが必要であると思いますが、この水の問題は、もうすでに鉄道局の言ってみれば、縄張りを超えてるというふうに思っておりまして、そこで、私どもは、環境省とか農水省とか、あるいは水、水道水ということになりますと厚生労働省ですし、また産業水となりますと経産省ですし、南アルプスのエコパークに関しましては、これは文科省でありますから、こうしたところがやはり、それぞれのお立場を明確にされなければならないと。これは意見を聴取というよりも、この水の問題というのは、極めて大きな問題として浮上してきていると思っております。
ちなみに、平成26年の前半期に、環境影響評価というのが出たわけですけれども、このときに、水循環基本法というのが制定されまして、それを受けまして、県では、改正した地下水の採取に関する条例を平成30年4月から施行しております。皆さんもご案内のとおりでありますけれども、そこで、地下水に関して基本理念をうたっているわけです。地下水は共有の県の財産であるということでいいますと、地下水の採取に関する条例は、通常、地下水条例といっておりますけれども、この地下水条例の第2条の2、ここに基本理念が書かれておりますけれども、地下水は県民共有の貴重な財産であると、公共性の高いものであると、こういうふうにうたっております。そして、知事は、帯水層の存する地域の地下水の採取の状況を把握しなければならない。また知事は県民に対して地下水の採取の状況および水位の検討その他の地下水に関する情報を提供しなければならないと、こういうことであります。言ってみれば、共有の財産というのは、誰のものでもあるということですね。同時に誰のものでもないということで、昔でいう入会地のようなもので、そこで、必要なまきを取りに行くとか。さまざまな肥料の原料を取りにいくとかですね、そういう入会地、英語で言うコモンズと、だから地下水はコモンズであるという、こういうことがうたわれております。この地下水は南アルプスから、この表面に流れるいわゆる公共の公水、公の水としての大井川と、それからその地下を流れる、この地下水といったようなものとして、この循環を維持しなきゃならないというのが水循環基本法で、この地下水についての基本的な考え方というのが、いわば、例えば記者さんの家の下に井戸を掘りたいと。それはあなたの家の土地ですから、あなたの水なんですね、私の水になります。しかしながら、この地下水全体として見た場合には、これは誰もが使えるという意味で共有水、公共の水と、いわば私の水の間にある地下水は共有水であるという理念がうたわれておりますので、そういう観点に、立たねばならないというふうに思っております。そして、この水に関わる省庁は鉄道局というよりも、農水省でしょう、あるいは経産省でしょう。あるいは厚生労働省でしょう。そうしたことから、国交省だけではこの水の問題については、コントロールできる権限を超えてるというのが、恐らく江口審議官が報告されて、今国交省が抱えてる問題ではないかというふうに私は思います。
ちなみにこれに関連しまして、いろいろ資料を見ていたら、2014年の静岡新聞、6月11日の記事なんですけれども、国交省は、6月10日リニア中央新幹線の環境影響評価について協議した自民党の特別委員会で、トンネル掘削工事で大井川の流量減少の影響が出た場合、同省が事業者のJR東海に対して施工停止を命令できるという見解を示したと。井林辰憲氏の質問に答えたとあります。井林氏によると国交省は環境影響を回避できる工法の提案がなければ施工を許可しないとの前提を示した上で、不測の事態が発生すれば、施工停止を命令できると説明したということであります。一方、環境省は同委員会でリニア工事による流量変化が最も大きいと見込まれる沿線の河川として大井川を挙げられたとのことであります。そういうわけで、今から思うと、井林さん本当にご立派だと思いますね。2014年ですから、もう5年余り前のことですけれども、こうした国交省の、言質をしっかりとっておられたということを再見したということでありまして、従って今、環境影響を回避できる工法の提案がなければ、今提案がない状況です。ですから、施工を許可しないとの、いわば命令ができるとのことでございますから、そういう事態にもなってるんじゃないかと思っております。補足いたしました。
(幹事社)
ありがとうございました。幹事社から追加で質問させてください。新しい協議の場の設定に国と県とJRと3者合意して1カ月以上が経っています。知事はなぜこの協議の場の設定が進まないとお考えなんでしょうか。何が障害になっていると考えたのでしょうか。
(知事)
何と言っても、鉄道局というのは、認可した当局なわけですね。そして、2027年、これに間に合わせるべく、JR東海に仕事してもらうということのために設定されたというふうに拝察しているところです。しかし、江口審議官が回られたところ、これは尋常ならざる水問題というものがあると。トンネルの水をトンネル外に排出するということで済む問題ではないということに気付かれたと思います。それからもう一つは、この台風19号の影響も大きいかと思います。台風19号で、畑薙からも、畑薙に行く道もそうなんですけど、畑薙から西俣のヤードに行く、この27.8キロの道ですけれども、これが寸断されて、そして今、仮道を造っていると。そこでもし事故が起こったときに救急車も入れる状態ではないということになって、これを復旧するにもすごく時間がかかると思いますね。
この間、ここに難波副知事、また宇野副社長、国交省の関係者が一緒に入られて、そのヤードが壊滅してる状態をご覧になったと。そしてそのヤードに行くのにもちろん車も入れませんので、2時間ばかり歩かなきゃいけなかったということでございますから、往復4時間ということなんですかね。それから、あのときだれか一緒に行かれましたか。岸上さんが行かれたと。後で報告してもらいたいと思うくらいですけれども。ともあれ、相当厳しいと。それから私どもの提案として、この畑薙っていうのは、これは特種東海製紙が管理されていると同時に、林道でありますけど特種東海製紙の許可がないと入れないところでありますけれども、そこに行く道、いわゆる三峰落合線とそれから閑蔵線、両方とも山道ですね。この道を当初は、夜に入るっていうことだったんですよ。それは危ないということで、何しろ地盤が緩んでおりますし、もともとこの間6月13日だったでしょうか、行ったときも道路が波打ってました。下から削られて、ガードレールがゆがんでると、ぶつかったとかじゃなくて下が削り取られて、それで道路が波打ってるわけですが、そういう地盤のところに夜に入って事故でも起こったら大変だから、ということで明るいうちに行ってくださいと。そして帰りも閑蔵線のところも見てくださいと申し上げたんですが、やはり恐らく岸上さんも経験されたことと思いますけれども、三峰落合線というのは相当長い20キロ以上の道のりでありまして、相当細い道を行かなくちゃいけないし、夕方になると濃霧が出ることがあります。そうしたところの一部にトンネル掘るということで、今、静岡市とJR東海の約束がございまして、しかし、それでもって安全な道が確保されるわけではないので、恐らく閑蔵線もご覧になってのことですから、閑蔵線ですと、山道に入る直前まで片側1車線ずつ、2車線で入れると。そして、トンネルを抜ければ畑薙の作業現場の入口といいますか、作業道に入るところにまで行けるので、そちらのこの選択肢についても、考えられた可能性もあります。
ですから、今前に進める状況じゃないということが、やっぱり国交省も南アルプスは、これは尋常ではないというふうに今、問題の大きさに手をこまねいてらっしゃるというふうに思っております。それが国交省の方から、われわれが出しました中間意見書に対するJR東海の回答書とその両方に対して、国交省からまだ文書での返事も来ませんし、滞ってる理由ではないかというふうに思います。
(幹事社)
もう1点だけ追加で教えてください。2019年もあと1カ月を切りましたけれども、知事は年内にどうしても何らかの協議を進める必要があるとお考えなのか、時間軸といいますか、スケジュール感についてはどのように考えてらっしゃるんでしょうか。
(知事)
私どもは別に、今日明日の問題ではありませんが、大事なことは、東俣線といいますか、畑薙から、ともかくそこに作業員が入っていくわけですから、そこはともかく早く林道を整備しなきゃいけないというふうに思いますね。それから、やれるところからやらなくちゃいけないと思いますけれども、そこの畑薙に行く、つまり作業道に入る山道、閑蔵線と、三峰落合線ですけれども、これについても、作業道に入る直前の道までどうするんだということで、もともと考えられていた閑蔵線も、当然、視野に入れなくちゃいけないと。そうしたところがきちっと整備されなければ、もしものときに、こういう台風の被害だとか、あるいはその豪雨だとか、あるいは山崩れとか不意のことが起こったときに、人を助けることができませんでね。そうしたことに照らしますと、何も12月31日までに、何かできるかというよりも、協議するよりも、今JR東海さん、あるいは静岡市が、あるいは場合によっては川根本町さんが三者で話し合って、どういうふうにすると、作業道を少なくとも安全に整備できるかということについて協議するというふうなことはあってもいいかもしれませんが、私はもう三峰落合線などというのは、通ったらすぐ分かりますよね。ああいうところをずっと通って毎日作業させるっていうのはおかしいと思う。危険ですよ。それをまずきちっとすることが先決ではないかと思います。本体工事なんか到底入れるような状態でないし、もうこの台風19号によって、少なくとも1年ほどは、工期が延びるということになるでしょう。そもそも西俣のヤードまで行けないわけですから、トラックも重機も入れませんよ。あの状態で、そういう状態になってますから、まずそこまでの安全を確保するというのが、事業者としての責任であるというふうに思います。 |